Yusuke Nakanishi

中西悠介さんについて――ARAKI Shin

私が中西さんに出会ったのは、三重県松阪市のカルティベイトというお店で演奏したときに、彼がPAで入って下さったのがきっかけだった。
その時目に入ってきたのは、ベリンガー(低価格で知られる)のスピーカーやSHURE SM57のマイクなどであり、特に機材名から何かを期待させるようなブランドというわけではなかった。
ところが、そこから出てきた音は、ヴィンテージの味と生っぽさが同居したような、特異なものだった。

あまりに驚いたので、何故そんな音が出るのか、次々と質問してしまった。
その結果判ったのは、たとえばスピーカーは、筐体はベリンガーでも中身のユニットは入れ替えているらしい。
が、そのユニットはクラシックプロ(サウンドハウス社の手がける低価格帯商品)で、本人曰く「むしろダウングレードしている」らしい(笑)。
また、実機のリミッターを使って敢えて苦しいぐらいのところまで音を詰めることで魅力が出るようなことを当時は仰っていた。

爾来、中部や関西へ行く機会を得ると、松阪へ足を延ばして、彼の秘密基地“Paradise Gate”へ足を運ぶようになった。
ヴィンテージ機材が所狭しと並び、そうした音が彼のベースになっているのは明らかだ。

コロナ禍で一時中断を余儀なくされたが、2022年10月、私がChemistryのライブ・サポートで久々に名古屋へ行くことになり、翌日松阪市へ向かい中西さんとコラボレートを行うことにした。

Paradise Gateへ着くと、スピーカーをはじめシステムは以前とはがらりと変わっており、映画用の筐体にユニットを全て入れ直したものだそうで、4Wayを4台のマルチアンプ+プロセッサーで鳴らしていた。
フロント・ロード・ホーンの外観から、ジャズ喫茶でしばしば聴くような枯れたホーン臭のある音を想像するかもしれないが、そこから出てきたのは、やはり中西さんらしい生っぽさとワイドレンジが同居した自然極まりない音で、何の引っかかりも無く心にすっと入ってゆくのを感じ、来て本当に良かったと感動した。

中西さんに初めて出会った頃は、上述のように実機(いわゆるアウトボード)のリミッターを効果的に使っているとのことだったが、現在は一切使っておらず、耳を頼りに行うEQ(帯域調整)と4ウェイのプロセッシングで同等以上の音が実現できるようになったとのこと。

同時に、私のほうもサクソフォンにエフェクト・ペダルを使った演奏が本格化して、自分ならではのスタイルを獲得しつつあり、数年を経たお互いの進化を多少なりとも映像に収めることができたと思う。

全てはカルティベイトで、定番機材からとんでもなく良い音が聴こえてきたことに気付くことができたことから始まった。


Paradise Gateでのコラボレーション

Sound System Coponents
HIGH eaw 2inch
MID HIGH eaw 10inch
MID LOW rcf 15inch
MID LOW rcf 18inch
All Horn Loaded 4way system

AMP
HIGH sony
MID HIGH qsc
MID LOW amcrown
LOW crest audio